HAL'S DIARY
オーナーのひとりごと。買付けの裏日記など。
きまぐれに更新しています。

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NATHAN DAVIS “NO EXIT”
2019/10/11

CENTRAL STATE UNIVERSITY JAZZ QUARTET and NATHAN DAVIS “NO EXIT” CENTRAL STATE UNIVERSITY 508049X (USA)

アメリカでよく見られる所の大学で作られたジャズ・アルバムである。
所が何とナイザン・デイビスが参加している。
これは聴かなければなるまい。

今日、レコード試聴で、Indiana Universityの有名なアルバムModern Music(Fantasy 3-214)がを聴いていた。
以前からマニアにも人気の高いアルバムで、内容が上品でスイングの上手い演奏だなあと感心していた。
そうしたら次に、偶然、Central State Universityのレコードが出て来たので、こっちはどうかな? と、つい続けて聴いてしまったのだ。

そうしたら、このレコードの出来の良さにも痺れてしまった。
両者の内容は別物なので、どっちがいいの悪いのという話ではない。

で、そもそも、ここセントラル・ステイト大学は黒人教育を主たる目的にした大学らしく、ジャズにも相当目を掛けてくれているようだ。
このレコードの中でもでプレイしていた生徒も今もミュージシャンになっている人も多い。
通常は学生時代の活躍とて、卒業後もとなるとなかなかそうは行かないものである。しかしそういう意味においても本物を育てようとしているのであろう、ここの大学は立派である。

それで内容、A面はクアルテットとネイザン・デイビスの演奏で,B面はエスニック・アンサンブルで6−7人のバンドである。
A面もいいなあと思っていたのだが、さらにB面の演奏のカッコ良いこと。ジャズとして、またクラブ・ミュージックとして、大変にノリが良くて私は驚いた。
こんなレコードもあるもんだなあ。
いや、感心した。

(写真はシュリンクが光ってしまって、少し見にくい、悪しからず)

北欧のレコード盤の変質
2019/10/03

以前にも書いた話でもあるが、重大な件でもあるので、書くことにした。
スエーデン等北欧で作られたレコード盤の変質の話。
今日、昔からの写真趣味の人と話をしていた所、話がネガの変質の事になって、お互い、それって酸っぱい匂いがしませんか?という事で、妙な一致をみた。

北欧のレコードが長年保管していたにも関わらずアバタのようになったり、収縮を起こしたりし、酢酸臭がし使用できなくなる状態である。
一方、写真のネガの方は、ある日保存してあったネガ(フィルム)が丸まってしまい、ちょうど葉巻のように。
しかも酸っぱい匂いがする。
写真屋に訊くと、「ビネガー・シンドローム」といってネガが変質して、それはもう使い物にならなくなってしまうのだそうだ。

ビネガーシンドロームという単語が分かればいくらでも例が挙げられて、ネットにもこれでもかと書かれている。
それを抜粋して整理してみると「ビネガーシンドローム」とは、長期間保管特に密閉されていたフィルムの、素材セルローストリアセテートが湿気及び熱により化学変化を起し、酢酸化する現象である。
最近ではPCの液晶部分が溶解した状態になり酢酸臭を発生すると。

結局フィルムは安定性を失い、画像を焼き付けている乳化剤も化学変化を起し、収縮、溶融と変形するということであり、それがちょっと前の日本においては写真愛好家の間で被害が広がったという。
そのようなフィルムは、現像は不可能で復活はできない。

とすると、気温が低く湿度の低い北欧においては問題になる事が無かったものと思われるが、それが高温多湿の日本において、あっという間にレコードに症状が現れて仕舞ったのである。

1950年以降にフィルムベース材として用いられた「セルローストリアセテート」であるが、この物質は
24℃・湿度50%の環境なら約30年、
30℃・50%の環境では約15年
35℃・70%では6、7年で起こる。
というデータがあったのだ。
レコードがそのままのデータ通りになるかどうかは不明であるが、ここのところ数年の暑さは異常で、それが大きな原因かとも思われ、また、レコードの保管の場合は、密閉度がぐっと高くなるので、更に悪さが加速されるものと予測される。

従って、この温暖化が叫ばれる中、レコードの管理は、室内の温度や湿度が上がらないよう工夫していただきたい。
結局は、本やレコードなどの保管の注意と同様、昔から言われている通りの保管をすることに尽きる。
また時々空気にさらすことが肝要である。

本の事「ジョージ・ルイス」
2019/9/30

本「ジョージ・ルイス/Call him George」小中セツ子訳 出版Soliton Corporation

自分ではジャズの本は沢山読んだと思っているが、これほど感激した本は初めてであった。
ネットでジョージ・ルイスの事を見ていた時、偶然にこの本を見つけ、矢も楯も堪らず連絡先と思わしい所にメールしたのだ。
するとすぐ返事が来て、こちらの本はまだ在庫があるというので、送って頂いたのだ。
急いで読み出してみたのだが、感激の連続であった。
読んでいる時には出来るだけ、ジョージ・ルイスのレコードを掛けるようにした。
その方が、よけいに人間性が伝わると思ったからであり、またジョージ・ルイスは音楽を通して人に語り掛ける人だと思ったのである。
「今日はみんなに語りたい事がある」と。

ジョージ・ルイスの波乱に満ちた人生、命を引換えにした音楽、頑固な痩せた小さな男のジャズの物語。
本の最後の方に、日本への演奏旅行の事も出て来て、誇らしい気持ちになった。
小中さんという方の翻訳もジョージ・ルイスを愛している事が伝わり、また文中から情景が浮かぶようで、とても楽しく、読み物としても大変面白い。

モダンジャズ以降に聴き始めた私にとって、かつてのニューオリンズ・ジャズは殆ど鑑賞の対象となってはいない。
しかし、こうして聴き、読んでみれば、ジャズを作った人々の人生の代表としてジョージ・ルイスを通して知ることが出来る。

読んでいてこんな箇所が....
「産まれてこの方、あんなクラリネットは見たことがありません。輪ゴムと針金でぎりぎり巻きになっていました。そんなクラリネットで演奏する人がいるとは信じられませんでした。ジョージは天使の如く演奏しました。オンボロのクラリネットから流れるあまりに美しい音に私は思わず....」

ジョージ・ルイスの燃え盛るような、ふわっと天に上がるようなサウンドには、心が奪われる。
良いなあ。

郵便局で
2019/09/29

数日前から、家内宛ての書留郵便物の不在票がそのままになっていて保管期日を迎えてしまうので、深夜、彼女をクルマに乗せて本局へ行った。
日本は24時間、郵便局が利用できるので有難い。

局の窓口で、不在票と共に印鑑も差し出した。
そうしたら、局員「生年月日を言って下さい」
家内が答える。
更に「星座は?」
家内「正座は苦手で椅子です」



デ・カフェ
2019/09/27

私は逆流性食道炎の調子が一段と活発になってきた。
と言う事は不調であると言う事である.
悩んで、色々な事を試してきた。
その一つが好物のコーヒーなのだが、これが厄介で胃酸が出て困る。
まず、カフェインの無いコーヒーを飲もうと、あちこち探してみると、意外や何処でも売っている。
ただし、あまり美味しいものでもない。
近所の豆屋さんに訊くと、その場で、カフェインを除去してある豆を焼いてくれるというのでお願いしてみた。
そうしたら結構、イケルし、味も悪くない。
何しろ、家内はクルマに乗る前にコーヒーでも飲んでしまうと、30分くらいしか走っていないのにもかかわらず、トイレに行きたいと言い出すので途中、コンビニなどで休憩ばかりすることになる。
しかし、今朝は朝コーヒーを飲んだ事をすっかり忘れるほどであった。
本人も驚いていたから、そうとうカフェインが少ないのだろう。
寝る前にも飲める。

GEORGE LEWISの続き
2019/09/26

21日の日記でGEORGE LEWISの話をかいた。
しかし、なぜか、何か書き残した事があるような気がして気持ちが悪くて仕方がなかったので、今日読み返してみて、やっと気が付いた。
彼の名曲「Burgundy Street Blues」。

このバーガンディーというのは、フランス語いうと「ブルゴーニュ」の事だよね。
ニューオリンズがフランスの国であった証拠の一つだね。
そもそもニュー・オルレアンでもあるから。

あとからこうやって書いていると、注釈を作っているだけで、面白くなかった。いっその事、書き直せばよかったかな、残念。
いや、気持ちを入れ替えてちょっとだけ。

この曲は、彼がドックで働いていた時、起重機がぶつかり彼は瀕死の重傷を負った。
数日後、骨折でまだ胸に包袋をまいたまま、なぜかベッドに座った彼が、家にあったテープテコーダでこの曲を初レコーディングしたのだ。
音楽への執着への恐ろしさは凄まじいものがある。

大田区にジャズ喫茶Slow Boatオープン
2019/09/24

東京大田区の東急池上線。
古い電車のドアのそば〜
いくつ駅をすぎたのか〜
私は西島三重子のヒット曲「池上線」を思い出してしまうのだが、今日の要件は歌の話ではない。
でも歌の通り、五反田駅から池上線に揺られながら、雪が谷大塚駅に着いて、駅程近く徒歩4分くらいであろうか。
ジャズ喫茶「SLOW BOAT」がオープン。
レコード・コレクションのラインアップも豊富で、立派なオーディオも擁した本格派ジャズ喫茶である。
近年、CDばかりでレコードを沢山揃えた店がオープンすることは珍しいので、私も楽しみである。


東京都大田区南雪谷1−3−16
03−6421−8193
営業は 13:00 − 21:00
定休日、月曜日、及び 第1、第3 火曜日

ジャズ関連の本
2019/09/23

最近、もう一度過去の文献・ジャズ批評の本などを読もうと思っている。

以前は相当数のジャズや音楽関係の本を持っていたのだが、店を開いた時に大量の本も一緒に売る事にした。
売れ行き方を見ていると、私の好きな本や、売りたくない本ほど、なぜか先に売れて行く。
なるほど「商売という物はそういうもんか」と思った。
そう言えばレコードもそういう傾向にある。モトエ。
従って、言ってはいけないが,売れ残ったものは、あまり好きで無かった本ばかりでもある。
暫くして余裕が出来た頃、あらためて好きな本を購入し直したりした。

無さそうに見えて、意外に沢山あるのがジャズの本でもある。
それでせっせと読んでみたけれど、外国で書かれた本の方が有意義である事が多い。
考えればそれは当然で英語の国の音楽であれば、文献も沢山あるし、証人も近くにいたという事でもある。
また当時の社会性や文化的な範疇におけるジャズの位置の堀下げも彼らの方が身近でもあり、しっかりと把握されていて、研究成果として、例え偏っている思想に基づいていたとしても、いや自分の立場を示しているからこそ面白いのだ。

そもそもジャズ評論は70年代あたりまでに出尽くした感はあるにもかかわらず、我が国の評論家たちは、もう書くことが無くなっているにもかかわらず、無理やりに書いているから、過去の評論家たちが使っていた表現がそのまんま写しているかのようである。
また、せっかくインタビューしたのに、複数の証人の話を聴いていないので、嘘を書いてしまった例もある。
ブルーノート・レコードのコレクション自慢をしているような評論家、流行って来たジャンルばかりせっせと取り上げる評論家、流行っているレーベルばかり持ち上げている評論家、といったひとが多く、昨年辺りから今更買って読むものかという気になってしまった。

また実際、音楽的にも最近のクラシック系というかポップス系というか、言って見れば「CDジャズ」の事などは、評論家の意見なども聴かなくても困る事はない。
なにしろ音楽から、有名になりたい、有名になりたい、と聴こえてくるから。

ERROLL GARNER “CONCERT BY THE SEA”
2019/09/22

ERROLL GARNER “CONCERT BY THE SEA” COLUMBIA CL883 (USA)

当店で過去、エロール・ガーナーのレコードを欲しいと言ったお客様はわずか2人だけである。
そのうちの一人はスエーデンから来た旅行者であった。
何と言う人気の無さ、私は気が遠くなりそうである。

ところが、豈(アニ)はからんや、当アルバムだけはなぜか大人気である。
不思議なミュージシャンである、いや不思議なレコードである。
それで謎解きのつもりで聴いて見ると。
たしかに聴けばたちまち強烈なスイング感に捉われ、心地よさのジャズの典型ともいえる。
シンプルで、派手な音色は粋で、しかも正確無比、モダンでありながら過去のジャズを失わない、さらにこれほど見事にジャズにおけるエンターテイメントを現わしたアルバムは他に類を見ない。
ノリの良いジャズの断トツの一番なのである。
サウンドもちょっと荒々しく、強い音でグイグイと入っているのがまた良い。

それなのに他のアルバムもまた立派な作品ばかりなのだが、その力作もマニアの間では無力な事と言ったら。
まあ、それが社会というものであろう。
それでもヨーロッパにおいては当時大人気だったと、現地のジャズファンに聞いて驚いた。
オランダでは同国オンリーの少数プレス作品もあるらしい。
人の好みは千差万別。
蓼(たで)食う虫も好き好きである、と言えばすべて解決。

ところで、この作品は1955年カリフォルニアのカーメルで行われた。
ジャケットを見るとなるほど、それらしい海岸である。可愛らしいと見える美女が手を広げている明るいカリフォルニアの風景である、といっても沖縄のような真っ青な海でもないんだけどね。

ところで、私は一度だけカーメルに行った事がある。
ヒッチコックの映画「鳥」の撮影された家があるというので行ってみたかったのだ。
カーメルはサン・フランシスコから車で南下して3・4時間で着く。
モントレーとカーメルの街が隣接していて、特にカーメルのこじんまりした高級感ある洒落た街並みが素晴らしい。
近くに水族館があって、見に行ったのだが、せっかく買った入場券だったが、外の港にラッコが沢山泳いでいて、ラッコが餌を取って来ては石で貝殻を叩いて中身を食べる様子が面白く長時間見とれてしまい私はつい中に入る事を忘れ、水族館の係りの人にもったいないと笑われた。
夕食のレストランで、大きなメインロブスターをレモンバター・ソースで食べた味はダイナミックで、手がべたべたになりボールの水とナプキンを何度も取替えてもらいながら食した事は、生涯忘れられない味である。
また行きたいな。
私は旅行会社勤務であり、更にレコード屋として海外旅行は何度も行ったが、観光旅行はほとんどしたことが無いので余計に良い思い出である。
今日もあらぬ方向に行ってしまった、一体なんの話だったか。

GEORGE LEWIS “AS RECORDED AT MUNICIPAL AUDITORIUM”
2019/09/21

GEORGE LEWIS “AS RECORDED AT MUNICIPAL AUDITORIUM” HUP RECORDS (USA)

私は古いジャズの中ではJAMES P.JOHNSON や このGEORGE LEWIS などが好きである。
GEORGE LEWISは風情のあるクラリネットのサウンドに痺れてしまう。
その中でもゆったりしたちょっと悲し気なバラードなど、街に現れたらどこまでも後を付いて行ってしまうに違いない、まるでハーメルンの笛吹き男の話のように。

それで、当アルバム。
HUPというレーベルの事も良く分からないがニューヨークの住所になっていて、サラトガという北のほうの良い街である。きっと個人がお金を払ったのであろう。
このジャケットも個人で作ったものであるらしく、様々な種類のジャケット、それも汎用ジャケに紙を貼っただけのシンプルな作りで、しかも紙の位置が上に行ったり下に行ったり気まぐれな感じも出ていて、注文があればせっせと作っていた事がしのばれる。
ブートかもしれないと思いながらライナーを見ていたら、最後の方に、4ドルをニューオリンズの住所に送ればジャズクラブのメンバーシップになれると書いているので、意外にブートでもなさそう。
数種類あるジャケはどれがオリジナルとは言い難いが、どうも昔の人の話では、この写真のものが古そうであるが断定は出来ない。

1951年や1952年の演奏で、この作品の名誉を押し上げているのはなにより1944年に彼自身が作曲した「Burgundy Street Blues」の存在につきる。
勿論人気曲であり何処へ行っても必ずリクエストされるのであるし、また何度か録音もしたのであろう、しかしどの演奏をきいてもそれぞれ味わいがあり、それぞれの感動がある。
なんとも言えないブルースの良い曲(歌)である。
ほぼ私家版であろう当アルバムも決して、大変良い音とは言えないのだが、それでも心に沁みるだけの音質は保っている。
素朴なクラリネットのジャズの演奏はかくありたいと願う音色で、なんども聴き返してしまう。
そしてただ、「自分も生きて来て良かった」と思うのである。

何しろ彼が1900年生まれであり、ジャズエイジと呼ばれる1920年代からジャズを演奏していたのだ。しかも1950年頃ウエストコーストなどを中心にニューオリンズ・ジャズのリバイバルがあり、それがまた彼の音楽人生もまた僅かな収入も、一段アップしたのだ。

録音場所がMunicipal Auditorium(Congo Square) New Orlieans となっているから、ニューオリンズの市民公会堂であろう、ネットで調べたところ、エルビス・プレスリーやレッド・ツッペリンの演奏などが華々しく書かれているものの、ジョージ・ルイスの話題は出て来なかった、残念。
しかしこの公会堂も2005年のハリケーン・カトリーナの洪水で大きな被害を被り未だに再建がされていないらしい。何しろ市の最高の場所でもあり、市民の誇りであるのだが市民の気持ちと資金の問題であれば、どうしようもない。

しかし、私の話も公会堂の方に行ってしまっては、どうしようもない。
今日はここまで!

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